肩の力を抜くことではない

 

「これは思っていた “肩の力を抜く” じゃない。」

これが、僕の、初めて肩の力が抜けたと感じた時の感想でした。

だから出来なかったのだと、ただ納得しました。

と同時に、これまでの努力を思い、ガックリしたのを覚えています。

 

ロルフィングのセッションでも、「そんな風に考えてなかった」「そんなこと聞いてない」というコメントをよくお聞きします。

僕自身も「早く言ってくれたら…」と誰かに言いたくなることが本当に沢山あります。

そのうちの一つが、この時の体験です。

 

そんな理由から、ロルフィングセッションで、まずは肩に力が入っていない感覚を味わってみるのは、良いスタートになるでしょう。

変わって、感じてみたら何かが分かる、といつも思います。

知らないうちに、自分の中に思い込みがあったことが分かってきます。

 

考えるだけでは分からないことがある。考えていたから出来なかった。

そんなことも分かってきます。

 

日々のセッションでも、頻繁に「力を抜こう、リラックスしようと努力しているけど、上手くできない」という悩みを持つ方にお会いします。

僕にも、肩や首の凝りがあり、肩の力を抜きたい、リラックスして生きたいと思い、さまざまな事を試してきたので、その気持ちはよく分かります。

 

肩の力を抜くことは、僕にとって、本当に難しいことでした。

「これ以上、力の抜きようがない」「どうやったら力が抜けるのか」と悩み、行き詰まっていました。

分かっているのに、力を抜くことができないというストレスは大きいものです。

 

当時は、力を抜こうと考えるあまり、身体が緊張し、余計に肩に力が入って固くなっていたことに気付けませんでした。

今の僕の言葉だと「肩に力を入れない程度に、肩の力を抜けないかと思ってみる」

あるいは「肩に入っている力は肩には無いので、落ち着いて」といった表現になるでしょうか。

これらも、変わった後だから言える言葉だなと思いますが。

 

身体の変化と同時進行で、必要がなくなった習慣や癖を手放す練習ができること。

これが、ロルフィングの大きな長所だと言えます。

練習を重ねていくと、ペースの違いはありますが、皆さんができるようになります。

 

そして、何よりも、近くで観察しているロルファーがいることに大きな違いがあります。

外からだと、動く時や、何かしようと考える時の、身体に力が入る瞬間が感じられます。

ご本人は、入れている実感が無いので、初めは指摘されてもピンとこないことがほとんどです。

だからこれまでは難しかったのです。

 

それをお伝えし、別の選択ができないか練習を繰り返してみます。

そのうち、無意識に入れ続けてきた力の存在が見えてきます。

一見すると大したことのない感覚の違いに、大きな変化への入り口があると感じられるようになると思います。

 

肩凝りに悩んでいない自分もいる。

肩に力が入っていても、自分で落ち着かせることができる。

そんな新しい可能性を感じてみて下さい。

 

経験を重ねていくほど、さまざまな可能性は広がっていくでしょう。

これまで目を向けてみることもなかった感覚に、ほんの少し注意を向けてみるという一歩を踏み出せるかどうか。

そこから、これまでとは違う道が現れてくると思います。

 

 

良い姿勢とは?

 

姿勢が悪いと周りから指摘され、気にしている。

また、肩凝り、腰痛、頭痛の原因であると思われる姿勢をなんとかしたい。

そのように、姿勢に悩み、ロルフィングを受けてみようと思われる方は多いです。

僕もそのうちの一人でした。

どうやっても思うような姿勢になれないことに疲れきっていました。

 

しかし、姿勢を考える時、「良い姿勢とはどのようなものか?」という、なんとなく分かっているようで、実はよく分かってない問題が出てきます。

何をもって良い姿勢とするのか。

顎を引いていることか、背中がまっすぐに伸びていることか、肩を下げ、胸をはっていることなのか…

形の上では、様々な表現方法があると思います。

僕もロルフィングの視点を持つまでは、姿勢を形のことだと考えていました。

ここに変化の手がかりがあります。

 

ロルフィングでは、「良い姿勢の時、身体は重力と調和している」と考えています。

常に身体が対応し続けている、この「重力」との関係から姿勢を考えてみることが、ロルフィングの大きな特徴なのです。

 

重力と調和したバランスになっていくと、身体は無理な力を使わず、楽に動けるようになります。

そんな時、身体は伸びやかになって、いわゆる良い姿勢になっていくのです。

形だけでなく、機能が良いかどうか。これがとても大事なポイントです。

 

そういう理由もあり、ロルフィングセッションにおいては、頭で考える正しさより、身体の感じる楽さ、心地良さを尊重することを心がけています。

皆さんも、立っている時や歩いている時に、スムーズで楽かどうか、良い感じがあるか、心地良さを味わっているかどうかを観察してみて下さい。

 

もしそれが感じられてないとすると、重力と調和した、自然な動きではない可能性があります。

楽であるということは、わざと力を抜いてしまうことではありません。

身体のバランスが良くなり、重力と調和すると、安定が生まれ、力まなくてもよい状態が現れるのです。

 

健康でありたいという思いから、良い姿勢になろうと考える方が多いと思います。

しかし、「正しい姿勢、良い姿勢になりたい」と考え、頑張ることが身体を固くしてしまい、健康で心地よい身体になるという、本来の目的から離れる結果を引き起こしている場合がよくあります。

以前の僕が、形だけの良い姿勢にこだわり、苦しくなっていても、「もっと頑張って良くならなければ」「正しい姿勢を早く手に入れなければ」と思い詰めて、心身の調子を崩してしまったように。

 

良い姿勢の時は、身体は楽に、効率よく動いている。

動きやすく、楽な身体の時、伸びやかになり、姿勢が良くなっていく。

身体には、そんな仕組みがあるようです。

 

自分の身体で感じてみないと、人によっては、とても共存するとは思えない、納得しにくい内容だと思います。

頭でっかちだった僕の心身も、なかなか納得してくれませんでした。

少しづつ変化していくと、それが感じられるようになります。

そして、僕に限らず、ロルフィングを重ねる皆さんもまた、同じように変化され、納得されていくのを、日々目の当たりにしています。

 

「楽に、心地良さを感じながら生きていても大丈夫」という安心感。

「いつも頑張っていないと姿勢が悪くなってしまうわけではない」という解放感。

これがロルフィングで体感してもらいたいと願っていることです。

 

 

冬の楽しみ~はっさく

 

昨年に続き、四国の農家さんから、はっさくを購入しました。

ロルフィングを学ぶ以前に、ニュージーランドのオーガニックファームで働いた時期があります。

自然に囲まれ、旬の野菜や果物を食べて過ごすという、なんとも心地の良いライフスタイルに惹かれました。

日本に帰国して、自然農や有機農業に触れながら、あの時のような生活ができないかと模索したこともありました。

そんな経緯もあるので、農業を生業としている方を見ると、素敵だなと思います。

 

農作物がよく育つ時、さまざまな条件のバランスが良いことが分かります。

自然の産物である僕らの身体にも、同じことが当てはまると言えるでしょうね。

姿勢良く、楽に動ける健康な時は、さまざまな要素や身体の各部分のバランスが良い状態だと思います。

 

ですから、特定の要素や、ある部分を良くすることに加えて、全体としてのまとまりや調和を考える視点を持っていることが、身体の健康を考える上で大切だと思います。

全体のまとまりをみる、というフィルターがあって、初めて見えてくるものがあるようです。

農作業をしながら、なんとなく感じていたことと、今、ロルフィングをしながら身体について感じていることは、基本的には同じだなと思っています。

 

さて、早速食べてみた、お待ちかねのはっさくは味が濃く、みずみずしく、そして甘みや酸味など、さまざまな要素のバランスが良く、やっぱり美味しいなと嬉しくなりました。

ロルフィングセッションの最中、身体が変化した後に「この感じは言葉では表現できない。どう言っても違う感じがする。」というコメントをお聞きすることが多いです。

 

はっさくのこの味も、やはり言葉では表現できないものですね。

こういう時、言葉とはそういうものだ、と痛感します。

それでも、バランスが良いこと、そして美味しく、食べると嬉しく、満足することは感じられ、分かります。

言葉だけで理解するのとは違う、別の理解の方法があるということですね。

 

だから、言葉で説明できないからといって、分かっていない訳ではないのだと思います。

むしろ、さまざまな要素がちゃんと感じられ、分かっているから言葉で表現できないと言えるのではないでしょうか。

何であれ、言葉のレベルだけでなく全体的に感じることが大事だと、ようやく思えるようになってきました。

そんなことも感じながら、冬の味覚を楽しんでいます。

 

深い呼吸・楽な呼吸・静かな呼吸

 

呼吸の大切さは、さまざまなところで説かれていますね。

浅い呼吸に悩み、楽に呼吸ができるようになりたいと思っている方は多いと思います。

また、健康になるため、深い呼吸ができるようになりたいと練習している方もいらっしゃるのではないかと思います。

 

僕自身も、呼吸が浅いことに気づいてから、深呼吸できないことに悩みました。

本に書かれているように呼吸法を練習し、頑張ってみるけど上手くできない、余計苦しくなるというのが、僕のいつものパターンでした。

今になると分かるのですが、深く呼吸をしようという思いで、身体が緊張してしまい、逆に楽な呼吸から遠ざかってしまう結果になっていたようです。

ロルフィングセッションでも、同じ傾向がある方にお会いすることが多いです。

だから、ロルフィングに来て下さるのだと思いますが。

 

セッション後に、「息が楽にできる」「自然に呼吸している」という感想をお聞きすることが多いです。

「普通に呼吸しているつもりだった」「苦しいと思ってなかったけど」という場合も結構ありますね。

身体が変化し、楽になってみると、息が浅く、呼吸が楽に出来てなかったことに気付きやすくなるようです。

 

人には、比較する対象ができて、差を感じることで、ようやく感じたり、違いが分かったりする仕組みがあるのだろうなと思います。

また、違いを感じるには、それを感じる回路や感覚が育ってくる必要もあるのだなと、これまでの経験の中で実感するようになりました。

そんな理由で、僕は、ロルフィングセッション中に、身体の感覚に目を向け、違いを感じてもらう時間をできるだけ取るようにしています。

そして、その作業には大きな価値があると、年数を重ねるにつれて、ますます良く分かってきました。

 

ところで、深い呼吸をすることと、大きく呼吸することは違うものだと思います。

人が楽に呼吸しはじめると、静かになっていくのを感じます。

そしてゆっくりとした感じになり、呼吸が全身に広がっていくような感覚に変わります。

そんな時は、自分が呼吸をしているというより、呼吸が起きているのを眺めているような感じに近いかもしれません。

 

「ちゃんと呼吸しよう、たくさん吸って吐こう」と思うことで、気付かないうちに作り出していた緊張に気付けるとよいですね。

まずは落ち着き、静かになってみることが、深い呼吸になるスタートだと思います。

そこで初めて、楽に、深く呼吸をする自分の身体に出会い始めることになるでしょう。

 

その時には、「深呼吸とはこういう感じだろう」と思うともなく思い、探し求めていたものとは違う感覚が広がっているだろうと思います。

それは、僕がそうだったように、「だから深呼吸ができなかったのか」と腑に落ちる体験となり、ほっと息をつける瞬間を与えてくれるのではないでしょうか。

 

腰痛への視点

 

腰痛は、現代人が抱える大きな問題の一つですね。

ロルフィングセッションに来て下さる方の多くは、腰痛に悩んでいたり、その経験があります。

もちろん、僕にもその経験はあり、ロルフィングを学び、この仕事をするようになった大きなきっかけの一つにもなっています。

 

自分の経験からも、お会いしてきた多くの方々とのセッションからも、腰痛には改善される余地がたくさんあると考えています。

あきらめる前に、見直してみるところが、まだまだ残っているからです。

これまで知らなかったやり方があり、試してみる価値は十分にあります。

 

腰痛になるまでには、さまざまな理由があったと考えられます。

例えば、足首の捻挫や、膝痛をかばうため、腰に必要以上に力を入れないと姿勢を保てなかった。

または、呼吸が浅く、肩に力が入っていた。

あるいは、良い姿勢にしようと胸を張ったり、骨盤を立てようと努力することが、背筋や腹筋を固くしてしまった、など。

いずれにしても、腰だけの問題ではないと言えるでしょう。

 

ですから、腰痛の改善には、体全体のバランスを整え、腰痛が起きにくくなる条件を揃えていくことが効果的です。

つまり、「腰だけに負担が掛からないような身体・習慣を手にすること」を考えるのです。

そういう視点になれば、まだまだやってみることが沢山残っているのが分かってきます。

 

身体のどの部分が良くなっても、腰の負担が減り、腰の改善につながる。

この視点は、とても大切です。

だから、できることを一つづつ積み重ねていけば大丈夫だと、思えるようになります。

 

例えば、少し呼吸が深くなること。

足首を上手く使えるようになること。

顎の緊張が和らぐこと、など。

どれも、僕らが思っているよりずっと、腰痛に大きな違いをもたらしてくれます。

 

ロルフィングセッションでは、身体全体の筋膜のバランスを整えることと、望ましくない動きの癖や習慣を手放す練習をします。

その結果、偏らず、まんべんなく身体が動くようになることで、腰痛が変わっていきます。

腰痛に限らず、膝痛、肩凝りも同じ仕組みです。

 

身体全体のバランスが良くなると、部分の問題も良くなっていく。

それを実感することで、「まだ試してみることがあった」「やり方次第で、変わることができそうだ」とご自分の可能性に気付いて頂きたいな。

そう思っています。

 

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。

引き続きお目にかかることができる方、それから、今年から新たにお会いできる方、皆さんとのセッションの機会を楽しみにしています。

それぞれの人が、心地よく、本来のその人らしく、自然体で生きていけるようになると、より優しさや思いやりのある社会に変化していくのだろうなと、思います。

日々のセッションが、少しでも、そんな方向に進むきっかけになることを願って。

今年もよろしくお願いします。

 

ロルフィング®とは?

 

身体の慢性的な痛みや、姿勢の問題に悩む方は、「施術などで良くなっても、またすぐに戻ってしまい、同じことが繰り返されるんじゃないか」と考えるようになるかもしれません。

あるいは、「きつくても頑張り続けて、良い姿勢を保たないといけない」「生まれつきだから仕方がない」「これまで頑張ってみたけど駄目だったから変わらない」などという考えになっていることもあるでしょう。

僕も、そんな考えを持っていた一人です。

 

身体の痛み、違和感、思い通りにならないイライラをなんとか解消したいと、ストレッチしたり、ジムでトレーニングしたり、走ったり、本を読んで、正しい姿勢や呼吸を練習したり、色々なことを試してきました。

どれをやっても上手くいかず、余計痛くなったり、苦しくなったり、疲れきって落ち込んだり、また思いついてやってみたり…の繰り返しが長く続いていました。

 

そんな時に、ロルフィング10シリーズを経験し、身体の変化とともに、僕のそういった考えは変わりました。

身体は変わる。無理なく、楽に動く可能性はある。

そんなことが感じられて、身体だけでなく、自分の思い込みからも解放され、本当に楽になっていきました。

 

皆さんにも、心地のよい身体で、楽に生きられる新しい感覚を味わってみてほしいと思います。

ロルフィングは、本来の身体のバランス、調和を取り戻し、生きやすくなっていくための、大きな手がかりとなるでしょう。

 

ロルフィング®は、アメリカ人女性の生化学者アイダ・ロルフ博士(1896-1979)によって始められたもので、ロルフィング身体統合法(Structural Integration)と呼ばれる “身体の再教育プログラム” です。

彼女は、健康な身体には、重力に調和した無理のないバランスがある、と考えました。

重力と格闘し続けている身体ではなく、重力とうまく関係を取りながら、楽に動けるのが本来の身体である、と。

 

皆さんもご存知の通り、家の安定には、柱が垂直で、床が水平であることは欠かせませんね。

同じように、重力の影響をいつも受けている身体にも、重力との関係から、各部分の最適な位置、並び方があるのではないかという視点で、身体を見直したのです。

そして、筋膜という、筋肉や骨、内臓など、あらゆるものを包み、それらを一つにつなげ、形(位置)を決めている結合組織に注目しました。

 

筋膜は身体全体に立体的に広がり、身体の中にある全てのものを包み、つなげている、ひとつながりのものです。

人の形をした、立体的な蜘蛛の巣や、目の細かいハンモックのようなイメージでも良いかと思います。

筋膜は、ケガや偏った動き方などが原因で固くなり、本来の柔軟性が減ってきます。

 

そうなると、固くなった筋膜に包まれている身体の部分の動きが減り、本来の動きや機能を発揮できなくなり、最適な位置から外れます。

スムーズに動けなくなったところを補うために、無理な力を使う必要が生まれると、徐々にそこが固くなり、その影響がまた別のところに…という具合に、全身に無理が広がります。

筋膜はひとつながりなので、どの部分に問題が起きても、程度の差はあれ、他のどの部分にも影響が及ぶということです。

 

彼女は、人の姿勢、身体の形を決めるはたらきを持つ、この筋膜ネットワークに、柔軟性と全体のバランスを取り戻すことで、身体の各部分が本来の位置に戻り、重力と調和した身体に戻っていくと考えました。

このように、重力との関係、筋膜ネットワーク全体のバランス、という視点から、身体全体を整えようと考えるのが、ロルフィングの大きな特徴です。

 

また、彼女は、姿勢(身体の形)に大きな影響を与えている日常の癖、習慣を見直し、身体本来のしくみに沿った動きを手にすることが必要だ、と考えていました。

同じところを繰り返し痛めたり、症状が繰り返される場合、望ましいものではない習慣や癖が理由になっていることが多いからです。

同じスポーツを長年続けることで、偏った身体の使い方になり、たくさん使い続けた部分を痛めやすいのは想像しやすいですね。

 

同様に、日常の立ち座り、歩きなどにもそういった偏りがあり、ただ気付いてないだけで、何十年と続け、身体に負担がかかっていると思ってみて下さい。

ですから、本来の自然な動きを手にするためには、日常でどんな動きをし、何が身体に起きているのかに気付き、習慣や癖を手放すことが大切になります。

それを練習するのもまた、ロルフィングの大きな特徴です。

 

このような観点から、ロルフィングでは

①身体に触れながら、筋膜という身体全体に広がる膜組織を中心とした、結合組織のネットワーク全体のバランスを整えること

②習慣を見直し、本来の身体の動きを取り戻していくこと

の2つを組み合わせながら、”重力と調和した、楽に動ける健康な身体” を目指しています。

 

アイダ・ロルフは「ロルフィングは治療ではなく、教育だ」という言葉を残しています。

そこには、その人自身が主体的に参加し、身体との関係を見直し、自分の身体に責任を持つようになってほしい、という思いが表れています。

 

また「身体が適切に働き始めると、重力が身体の中を流れ、自然に身体が治っていく」という言葉も残しています。

ここには、身体には本来備わっている自己調整力があり、それが作用するのであって、誰かが治したりするのではない、という視点があります。

これらの言葉に、ロルフィングの基本的な立ち位置がよく表現されていると思います。

 

ロルフィングで、身体は変わること、自然体で楽に生きられることに気付き、心地の良い毎日を過ごしていけるお手伝いができると嬉しいです。

 

ロルフィング®10シリーズ

 

ロルフィングを始めたアイダ・ロルフ博士は、ロルフィングのテーマである “重力と調和した身体” になるためのエッセンスを10回のシリーズにまとめ、教え始めました。

これがロルフィングの基本プログラムである “10シリーズ”で、レシピと呼ばれています。

 

僕がロルフィングのトレーニングコースで学んでいる時のインストラクターは、20年近くロルファーとしての経験を持っていました。

その彼が「今回、クラスで教えるために、10シリーズというプログラムを見直してみて、本当に良くできているものだと改めて感じている」と話してくれたことが、印象に残っています。

そして今、その言葉の意味が、以前にも増して、分かるようになってきました。

 

ロルフィング10シリーズの良いところは、10回の連続したセッションを通して、身体全体が重力と調和し、本来の動きを取り戻す力を育てていくことにあります。

傾いてしまった家のドアが開かなくなった時に、ドアだけを直すのではなく、家全体の傾きを直すことが根本的に必要になりますね。

同じように、部分的に起きているように見える問題でも、身体全体のバランスを整える視点を持っていることで、より継続する変化にすることができるのです。

 

例えば、下半身が不安定で、肩に力を入れる姿勢になっている方は、肩をマッサージしてみても、しばらくするとまた固くなり、肩凝りの状態に戻ってしまうことが考えられますね。

もし、肩の変化とともに、下半身のバランスも良くなれば、肩の柔らかい状態は続きやすいでしょう。

身体の全ての部分に同じことが言えます。

 

膝は、足首の影響を受けるし、その逆もあります。股関節は膝と密に関係しているので、どちらの不具合も、お互いに影響を与えることになるでしょう。

ですから、身体の変化のためには、それが受け入れられるような条件を整えながら、身体全体でのバランスやまとまりを大切にする視点が必要になります。

 

10シリーズの1回目のセッションでは、深い呼吸がテーマで、胸郭や横隔膜を解放するような内容で行われます。

それが、2回目以降のセッションでの変化を受け入れやすい身体への助けにもなっています。

 

そして、少し間隔をあけた2回目のセッションでは、足がちゃんと地面に着地するように働きかけます。

足に安定感が増えてくると、身体全体が安定するので、3回目以降の身体の深い部分の解放へ準備ができてくる、という具合です。

連続する10シリーズには、そのような系統立てられた部分に強みがあります。

 

それから、習慣を見直し、身体本来の動きを取り戻すという点から考えても、10回継続することには良さがあります。

様々な習い事をするのと同じですね。回数を重ね、慣れることで上達するからです。

 

楽に呼吸すること、肩を楽にして立つこと、緊張に気付き、ゆるめることなど、初めは難しくても、少しづつ練習し、回数を重ねることで、誰でもできるようになっていきます。

僕自身をはじめ、ロルフィングを受けて下さっている多くの方々がそうであったように。

 

できるだけスムーズに、良い変化が起きるように、皆さんそれぞれの特徴に合わせて、様々な方法、言葉がけを組み合わせながら、お手伝いします。

自分の慣れた視点や感覚ではなく、他者の視点、ロルファーの手があると変化が起きやすく、感じやすいものです。

 

僕自身も、ロルフィングの受け手になる時は、いつも思います。

これは1人だと分からないな、人の手があるとスムーズだな、楽だなと。

ロルファーは触媒のような存在とも言えますね。自分以外だから効果があるのです

 

加えて、日常生活での意識の持ち方、有効なイメージなどをご紹介して、各回の間に練習してもらいます。

次のセッションで、それが役立ったかどうかの確認をしてから、また新しい情報や感覚をご紹介して、次回まで意識して過ごして頂く、という流れになっています。

 

回を重ねるごとに、身体の柔軟性、適応力も増し、身体とのコミュニケーションがスムーズになっていくことが感じられるようになるでしょう。

そうやって、自分の身体と上手にやり取りができる神経回路を育てていくプロセスが、ロルフィング10シリーズです。

各セッションの内容とテーマは、簡単にまとめると以下のようになります。

 

1. 胸部・横隔膜を中心にしたワーク(自由な呼吸)

2. 足を中心としたワーク(身体の支え、地面への適応)

3. 身体の側面へのワーク(身体の奥行き、前後への広がり)

4. 脚の内側,骨盤底へのワーク(身体の中の広がり、支え)

5. 大腰筋を中心としたワーク(腹腔のバランス)

6. 背中側全体へのワーク(背骨全体のつながり)

7. 頭・首を中心としたワーク(頭と首のバランス)

8.9. 身体が全体として機能するよう、つなげていくワーク

10. 全体のバランスを考え、まとめるワーク

 

ロルフィング10シリーズを通して、心地よく生きられる身体を手にして、皆さんが可能性を広げていくお手伝いができると嬉しいです。

まだ試したことのない方法があり、見たことのない自分が存在します。

ぜひ、新しい感覚を味わい、楽しんで下さい。

 

ロルフムーヴメント™

 

僕は、思うようにならない姿勢や、楽にできない身体の状態にずっと悩み、試行錯誤してきました。

ロルフィングで、それが変わり、身体を楽にする手がかりが分かってきました。

ロルフィングセッションの大きな特徴は、受け手本人に参加してもらうことです。

 

誰かに、身体を外部から治してもらうことだけでは、本当の変化は継続していかないのではないか。

その人自身が、自分の身体に目を向け、付き合い方を変えることが、健康を保つのに欠かせないのではないか、という考えが基本にあります。

 

日常での身体の使い方、日々の過ごし方が、姿勢や健康に大きく影響します。

ですから、そこが変化すれば、身体もちゃんと変わってくれると言えます。

僕は、この視点、関わりをロルフィングセッションで学び、大きく助けられました。

 

そんな経験もあり、僕は、セッションの中で、習慣や癖に気付き、それを手放す練習に、時間を多めに使う傾向があると思います。

アメリカでロルフィングを教えていた先生が「あなたの部屋の歩き方が、あなたの人生の歩き方だ」というような言葉を残しています。

 

同じように、人生の歩き方が、部屋の歩き方に現れているとも言えます。

どのような価値観で、どんなことを考えて生きているのかが、動き方に大きな影響を与えているということです。

 

ロルフィングコミュニティーは、動きの変化を通して、身体(姿勢)の変化を探っていくアプローチを “ロルフムーヴメント” と名付け、発展させてきました。

ロルファーの認定とは別に、ロルフムーブメントの資格認定トレーニングがあります。

僕はロルファーになって3年目に、シドニーでのトレーニングコースに参加しました。

そこでは教え方よりも、ロルファー自身が、自分の身体への気付きを高めること、知覚パターンを変化させることに主眼が置かれていました。

 

大きな助けになったのは、立ち方、座り方、動き方、呼吸などを、正しくしようと考えてもできない仕組みのようだ、という気付きでした。

ちゃんとしようと考えて、力まなくていいんだという開放感が広がっていったのを覚えています。

 

正しい動きを覚える訳ではなく、自然な動きが現れやすいように、問いかけ方を学んでいくという感じでした。

気付かないところに、さまざまな理由からの癖やパターンがあり、それが条件反射的に繰り返されていることが、不調や痛みの原因になってきます。

 

ちゃんとしようと思うことで、身体の奥が収縮すること。

無意識で続けられている、小さい時に覚えた背中を緊張させる立ち方。

なんとなくうろ覚えの骨や筋肉の知識と、実際の身体とのズレ。

身体の内部や、周辺にある、空間を感じにくい領域の存在。

目、耳、口などの感覚器官の緊張感。

 

これらは、どれも姿勢や動きの癖に大きな影響を与えています。

普段はあまり目を向けない、このようなところに意識を向け、気付いていくことで、これまでとは違う自分の身体に出会い始めます。

 

身体に問いかけ、脳の中にあるプログラム、情報、地図、設定を変えることで、身体の変化を促すような作業だと言えます。

正しい姿勢がとれない、簡単な動きが楽にできない、と思い悩んでいる方に、ぜひ知ってもらいたい内容です。

 

トレーニングコースの終わり近く、インストラクターに言われた言葉があります。

「今は感じられないと思うけど、あなたの胸(ハート)の中は、もっと広く、もっと深い。広大な空間、スペースが広がっている」

それを見ていきなさい、いつか感じられるようになる、と。

それから、普段の生活や、日々のセッション、さまざまな学びの中で、その意味を考えてきました。

 

今、振り返ってみて、本当にそうだったんだなと、彼女の言葉を思い返しています。

ささやかな感覚の違いに目を向け、それに気付くことを繰り返すことで、ちゃんとした変化になっていく。

そんなロルフムーブメントから学んできた視点は、他のさまざまな学びと同様に、普段のロルフィングのセッションで、常に大切にしています。

 

64歳 女性

 

私は 運動指導者です。

長年のハードワークで膝を痛めて手術をしました。

ボディーケアの重要性を痛感して勉強する中で「ロルフィング」と出会いました。

 

忍先生のナビゲーションのもとで、心身の感じ方や反応に「癖」と「こだわり」が有る事を発見しました。

それらは経験と習慣に基づく脳からの指令です。

その為、いくら運動やマッサージをしても、脳の指令が従来のままだと、姿勢や動作は変わらず、故障は繰り返されます。

 

今までの心身の捉え方を手放し、穏やかなイメージに置き換える脳トレをしてきました。

心身の扱い方が変わってくると、窮屈さは消えて、縛られていた「こだわり」からも距離が持てて、≪生き方≫までも楽になりました。

 

運動指導において、伝えたい本質が変わったのは言うまでもありません。

月1回のセッションは貴重なリセットの時間です。