リハビリとしてのロルフィングの効果

 

足首の捻挫や、ギックリ腰などをした後、それ以外の部分の動きまでギクシャクしていった経験はありませんか。

あるいは、何かで入院し、回復した後も、身体全体に違和感が残っていた、など。

 

僕自身も、ケガをした後から、スムーズに動けなくなっていった経験があります。

それまで普通にできていたことが、色々と考えても、できなくなっていく感じでした。

 

私たちは、痛めたところをかばう動きをします。

例えば、痛めた側の足に体重をかけないようにする。

あるいは、歩き出す時に、肩や腰に力を入れる。

これらは、痛みがある時には、部位の保護のために大切で、必要なことです。

 

しかしながら、回復後も同じように動き続けると、新たな癖になる可能性があります。

また、頭では大丈夫だと分かっていても、身体が反射的にかばう動きを繰り返すことがあります。

これも、気付かないうちに、習慣化してしまう場合があります。

 

そして、どんなケガや手術であれ、私たちが思うよりもずっと、心身に緊張が残るようです。

結果、気付かないうちに、呼吸が浅くなっています。

あたかも、まだケガや手術が続いていると思い、身構えているかのように。

 

ロルフィングは、身体の柔軟性と、まとまり・つながりを取り戻します。

そして、緊張していた身体がゆるんで、落ち着いて呼吸できるようになります。

これが、ロルフィングがリハビリとして効果的である大きな理由です。

 

長年痛みがあり、手術まで至ったような場合は、さまざまな動き方の癖があると思ってよいでしょう。

同じことを繰り返したくない、そして、より良くなっていきたいと望まれる方。

そんな方には特に、ご自分の身体を見直す機会として大いに役立てて頂けるはずです。

 

ほっと深く息をつけた瞬間、ようやく身体は、手術や治療が終わったと理解するような気がします。

そこから、身体全体の回復がスムーズに進んでいくのではないでしょうか。

 

身体の重さを感じられると、身体は軽くなる

 

「さっきよりも身体の重さを感じていて、身体は軽く感じ、楽に動ける」

この文章、一見すると矛盾してみえますが、ロルフィングのセッションで、多くの方が話される内容です。

 

ロルフィングでは「重力と調和し、楽に動ける身体」を求めていきます。

その過程で、感じられることの一つが、上記のような言葉になります。

「重さがあるのに軽いというのはおかしいけど」と、ご自分で言われながら。

 

重力と調和したバランスの良い身体では、身体の各部分が、適切な位置に並び始めます。

いわゆる「良い姿勢」に近付いていきます。

 

「頭が、楽に胴体の上にのって、首が楽になり、目線が高くなった」

「上半身が、骨盤の上にちゃんとのってくれるので、無理なく上体を起こせ、姿勢が良く感じられる」

 

変化していくと、このような感想が増えます。

正しいと思っている姿勢を、力を入れて作っている時とは違う、別の感覚の存在。

それが感じられてきます。

 

身体の奥にある筋肉群(インナーマッスル)には、重さが伝わることで、本来の機能を発揮する仕組みがあるようです。

ですから、重力が流れる身体になると、身体の深層にある、姿勢を安定させるための筋肉群がちゃんと働いてくれるようになります。

 

そうなると、姿勢を維持するために、無理な力を使う必要が減っていきます。

本来の、健康な身体のコンディションに近付きます。

当然ですが、そんな時は動きの効率がよく、燃費もよくなっていくのです。

 

正しい姿勢を維持するために、ずっと力を入れて頑張らなくても大丈夫。

この理解は、僕にとって本当に大きな解放で、毎日が楽になりました。

 

それは、ロルフィングを受けられている多くの方にも、共通することです。

身体が楽なことは、やっぱり嬉しいことです。

 

重力と仲良く、調和しながら、心地のよい身体で毎日を生きるのか。

それとも、重力と格闘しながら日々を過ごしていくのか。

一生を通して考えてみると、とても大きな差になるのが感じられてきますね。

 

重さの感覚を味わい、いつもとは違う身体になってみる。

すると、この言葉の意味が、身体を通して分かってくることでしょう。

「身体の重さを感じられるので、身体が軽く感じられ、楽に動ける」

 

もしかすると、「重さ」と「重たさ」の違いに気付けるかもしれません。

言葉から生まれている縛りに気付き、そこから自由になっていけること。

これもまた、ロルフィングを面白いものにする大きな要素となっています。

 

筋膜リリースとロルフィング

 

筋膜という言葉、聞かれたことはありますか。

「筋膜リリースが、肩凝りや腰痛に効果がある」というような形で、筋膜という単語が、以前よりも聞かれるようになってきました。

 

ロルフィングは、筋膜を扱うものだということで、知られている部分もあります。

「筋膜に興味を持って」と、ロルフィングを受けられる方も多いです。

 

筋膜という言葉からは、筋肉を包む膜というイメージが浮かびやすいかもしれませんね。

それも筋膜ですが、骨を包む膜も、内臓を包む膜も、そして脳を包む膜も、筋膜と捉えることができます。

 

身体のあらゆるものを包み、それらをひとつにつなげ合わせているもの。

それぞれの部分の位置を決め、人の形(姿勢)を決めるもの。

それが筋膜のポイントだと思います。

 

僕の場合は、筋膜の存在を知り、それまでの「骨が柱で、その周りに筋肉がついているという身体のイメージ」が違っていたようだ、と気付いたのを覚えています。

そして「人の形をした、立体的なクモの巣や、薄いハンモックのようなものに、筋肉や骨、内臓などが包まれて、浮かんでいる」イメージが、より実際に近いのだと思うようになりました。

 

このような、ひとつながりの筋膜のイメージが持てると、身体のどの部分の問題も、程度の差はあれ、全体に影響することが、自然と感じられてきました。

例えば、セーターの裾が引っ張られると、セーター全体の形が崩れることを想像してみてください。

または、クモの巣の一部を引っ張ると、全体の形が変わることも、皆さん一度は見たことがありますね。

 

筋膜を考えると、身体が全体で一つのものとして機能することに納得できます。

そして、それらが形(姿勢)に影響を与えることも分かってきます。

 

健康な時、筋膜には柔軟性があり、あらゆる方向に伸縮するので、身体はスムーズに、自由に動くことができます。

ところが、偏りのある動きや、ケガなどの影響で、筋膜が固くなります。

その結果、筋膜の伸び縮みできる機能が下がり、筋肉や関節の動きが少なくなってきて、様々な不調の原因になっていきます。

 

このように固くなった筋膜ですが、手技で触れることや、新しい動きをうながすことで、柔軟性や健康な機能を取り戻していきます。

ロルフィングでは、身体全体に広がる、この筋膜(結合組織)ネットワークの柔軟性を取り戻し、バランスを整えることで、姿勢や動きの改善を手にしていくのです。

 

とはいえ、ロルフィングは、筋膜リリースをすることが目的ではありません。

身体が重力と調和すること。

そして、自分自身で身体と上手に付き合い、その人らしく、健康に生きていけるようになること。

そういった目的を持つ、身体の再教育プログラムです。

 

筋膜(結合組織)ネットワークに働きかけ、柔軟性を取り戻すこと。

同時に、気付きを高め、偏った身体の使い方・動き方を手放していくこと。

そこで身体に浮かんできた新しいイメージと感覚からは、新しい動きや姿勢が現れることでしょう。

それを、ご自身で体験してみて下さい。