肩の力を抜くことではない

 

「これは思っていた “肩の力を抜く” じゃない。」

これが、僕の、初めて肩の力が抜けたと感じた時の感想でした。

だから出来なかったのだと、ただ納得しました。

と同時に、これまでの努力を思い、ガックリしたのを覚えています。

 

ロルフィングのセッションでも、「そんな風に考えてなかった」「そんなこと聞いてない」というコメントをよくお聞きします。

僕自身も「早く言ってくれたら…」と誰かに言いたくなることが本当に沢山あります。

そのうちの一つが、この時の体験です。

 

そんな理由から、ロルフィングセッションで、まずは肩に力が入っていない感覚を味わってみるのは、良いスタートになるでしょう。

変わって、感じてみたら何かが分かる、といつも思います。

知らないうちに、自分の中に思い込みがあったことが分かってきます。

 

考えるだけでは分からないことがある。考えていたから出来なかった。

そんなことも分かってきます。

 

日々のセッションでも、頻繁に「力を抜こう、リラックスしようと努力しているけど、上手くできない」という悩みを持つ方にお会いします。

僕にも、肩や首の凝りがあり、肩の力を抜きたい、リラックスして生きたいと思い、さまざまな事を試してきたので、その気持ちはよく分かります。

 

肩の力を抜くことは、僕にとって、本当に難しいことでした。

「これ以上、力の抜きようがない」「どうやったら力が抜けるのか」と悩み、行き詰まっていました。

分かっているのに、力を抜くことができないというストレスは大きいものです。

 

当時は、力を抜こうと考えるあまり、身体が緊張し、余計に肩に力が入って固くなっていたことに気付けませんでした。

今の僕の言葉だと「肩に力を入れない程度に、肩の力を抜けないかと思ってみる」

あるいは「肩に入っている力は肩には無いので、落ち着いて」といった表現になるでしょうか。

これらも、変わった後だから言える言葉だなと思いますが。

 

身体の変化と同時進行で、必要がなくなった習慣や癖を手放す練習ができること。

これが、ロルフィングの大きな長所だと言えます。

練習を重ねていくと、ペースの違いはありますが、皆さんができるようになります。

 

そして、何よりも、近くで観察しているロルファーがいることに大きな違いがあります。

外からだと、動く時や、何かしようと考える時の、身体に力が入る瞬間が感じられます。

ご本人は、入れている実感が無いので、初めは指摘されてもピンとこないことがほとんどです。

だからこれまでは難しかったのです。

 

それをお伝えし、別の選択ができないか練習を繰り返してみます。

そのうち、無意識に入れ続けてきた力の存在が見えてきます。

一見すると大したことのない感覚の違いに、大きな変化への入り口があると感じられるようになると思います。

 

肩凝りに悩んでいない自分もいる。

肩に力が入っていても、自分で落ち着かせることができる。

そんな新しい可能性を感じてみて下さい。

 

経験を重ねていくほど、さまざまな可能性は広がっていくでしょう。

これまで目を向けてみることもなかった感覚に、ほんの少し注意を向けてみるという一歩を踏み出せるかどうか。

そこから、これまでとは違う道が現れてくると思います。

 

 

良い姿勢とは?

 

姿勢が悪いと周りから指摘され、気にしている。

また、肩凝り、腰痛、頭痛の原因であると思われる姿勢をなんとかしたい。

そのように、姿勢に悩み、ロルフィングを受けてみようと思われる方は多いです。

僕もそのうちの一人でした。

どうやっても思うような姿勢になれないことに疲れきっていました。

 

しかし、姿勢を考える時、「良い姿勢とはどのようなものか?」という、なんとなく分かっているようで、実はよく分かってない問題が出てきます。

何をもって良い姿勢とするのか。

顎を引いていることか、背中がまっすぐに伸びていることか、肩を下げ、胸をはっていることなのか…

形の上では、様々な表現方法があると思います。

僕もロルフィングの視点を持つまでは、姿勢を形のことだと考えていました。

ここに変化の手がかりがあります。

 

ロルフィングでは、「良い姿勢の時、身体は重力と調和している」と考えています。

常に身体が対応し続けている、この「重力」との関係から姿勢を考えてみることが、ロルフィングの大きな特徴なのです。

 

重力と調和したバランスになっていくと、身体は無理な力を使わず、楽に動けるようになります。

そんな時、身体は伸びやかになって、いわゆる良い姿勢になっていくのです。

形だけでなく、機能が良いかどうか。これがとても大事なポイントです。

 

そういう理由もあり、ロルフィングセッションにおいては、頭で考える正しさより、身体の感じる楽さ、心地良さを尊重することを心がけています。

皆さんも、立っている時や歩いている時に、スムーズで楽かどうか、良い感じがあるか、心地良さを味わっているかどうかを観察してみて下さい。

 

もしそれが感じられてないとすると、重力と調和した、自然な動きではない可能性があります。

楽であるということは、わざと力を抜いてしまうことではありません。

身体のバランスが良くなり、重力と調和すると、安定が生まれ、力まなくてもよい状態が現れるのです。

 

健康でありたいという思いから、良い姿勢になろうと考える方が多いと思います。

しかし、「正しい姿勢、良い姿勢になりたい」と考え、頑張ることが身体を固くしてしまい、健康で心地よい身体になるという、本来の目的から離れる結果を引き起こしている場合がよくあります。

以前の僕が、形だけの良い姿勢にこだわり、苦しくなっていても、「もっと頑張って良くならなければ」「正しい姿勢を早く手に入れなければ」と思い詰めて、心身の調子を崩してしまったように。

 

良い姿勢の時は、身体は楽に、効率よく動いている。

動きやすく、楽な身体の時、伸びやかになり、姿勢が良くなっていく。

身体には、そんな仕組みがあるようです。

 

自分の身体で感じてみないと、人によっては、とても共存するとは思えない、納得しにくい内容だと思います。

頭でっかちだった僕の心身も、なかなか納得してくれませんでした。

少しづつ変化していくと、それが感じられるようになります。

そして、僕に限らず、ロルフィングを重ねる皆さんもまた、同じように変化され、納得されていくのを、日々目の当たりにしています。

 

「楽に、心地良さを感じながら生きていても大丈夫」という安心感。

「いつも頑張っていないと姿勢が悪くなってしまうわけではない」という解放感。

これがロルフィングで体感してもらいたいと願っていることです。

 

 

冬の楽しみ~はっさく

 

昨年に続き、四国の農家さんから、はっさくを購入しました。

ロルフィングを学ぶ以前に、ニュージーランドのオーガニックファームで働いた時期があります。

自然に囲まれ、旬の野菜や果物を食べて過ごすという、なんとも心地の良いライフスタイルに惹かれました。

日本に帰国して、自然農や有機農業に触れながら、あの時のような生活ができないかと模索したこともありました。

そんな経緯もあるので、農業を生業としている方を見ると、素敵だなと思います。

 

農作物がよく育つ時、さまざまな条件のバランスが良いことが分かります。

自然の産物である僕らの身体にも、同じことが当てはまると言えるでしょうね。

姿勢良く、楽に動ける健康な時は、さまざまな要素や身体の各部分のバランスが良い状態だと思います。

 

ですから、特定の要素や、ある部分を良くすることに加えて、全体としてのまとまりや調和を考える視点を持っていることが、身体の健康を考える上で大切だと思います。

全体のまとまりをみる、というフィルターがあって、初めて見えてくるものがあるようです。

農作業をしながら、なんとなく感じていたことと、今、ロルフィングをしながら身体について感じていることは、基本的には同じだなと思っています。

 

さて、早速食べてみた、お待ちかねのはっさくは味が濃く、みずみずしく、そして甘みや酸味など、さまざまな要素のバランスが良く、やっぱり美味しいなと嬉しくなりました。

ロルフィングセッションの最中、身体が変化した後に「この感じは言葉では表現できない。どう言っても違う感じがする。」というコメントをお聞きすることが多いです。

 

はっさくのこの味も、やはり言葉では表現できないものですね。

こういう時、言葉とはそういうものだ、と痛感します。

それでも、バランスが良いこと、そして美味しく、食べると嬉しく、満足することは感じられ、分かります。

言葉だけで理解するのとは違う、別の理解の方法があるということですね。

 

だから、言葉で説明できないからといって、分かっていない訳ではないのだと思います。

むしろ、さまざまな要素がちゃんと感じられ、分かっているから言葉で表現できないと言えるのではないでしょうか。

何であれ、言葉のレベルだけでなく全体的に感じることが大事だと、ようやく思えるようになってきました。

そんなことも感じながら、冬の味覚を楽しんでいます。

 

深い呼吸・楽な呼吸・静かな呼吸

 

呼吸の大切さは、さまざまなところで説かれていますね。

浅い呼吸に悩み、楽に呼吸ができるようになりたいと思っている方は多いと思います。

また、健康になるため、深い呼吸ができるようになりたいと練習している方もいらっしゃるのではないかと思います。

 

僕自身も、呼吸が浅いことに気づいてから、深呼吸できないことに悩みました。

本に書かれているように呼吸法を練習し、頑張ってみるけど上手くできない、余計苦しくなるというのが、僕のいつものパターンでした。

今になると分かるのですが、深く呼吸をしようという思いで、身体が緊張してしまい、逆に楽な呼吸から遠ざかってしまう結果になっていたようです。

ロルフィングセッションでも、同じ傾向がある方にお会いすることが多いです。

だから、ロルフィングに来て下さるのだと思いますが。

 

セッション後に、「息が楽にできる」「自然に呼吸している」という感想をお聞きすることが多いです。

「普通に呼吸しているつもりだった」「苦しいと思ってなかったけど」という場合も結構ありますね。

身体が変化し、楽になってみると、息が浅く、呼吸が楽に出来てなかったことに気付きやすくなるようです。

 

人には、比較する対象ができて、差を感じることで、ようやく感じたり、違いが分かったりする仕組みがあるのだろうなと思います。

また、違いを感じるには、それを感じる回路や感覚が育ってくる必要もあるのだなと、これまでの経験の中で実感するようになりました。

そんな理由で、僕は、ロルフィングセッション中に、身体の感覚に目を向け、違いを感じてもらう時間をできるだけ取るようにしています。

そして、その作業には大きな価値があると、年数を重ねるにつれて、ますます良く分かってきました。

 

ところで、深い呼吸をすることと、大きく呼吸することは違うものだと思います。

人が楽に呼吸しはじめると、静かになっていくのを感じます。

そしてゆっくりとした感じになり、呼吸が全身に広がっていくような感覚に変わります。

そんな時は、自分が呼吸をしているというより、呼吸が起きているのを眺めているような感じに近いかもしれません。

 

「ちゃんと呼吸しよう、たくさん吸って吐こう」と思うことで、気付かないうちに作り出していた緊張に気付けるとよいですね。

まずは落ち着き、静かになってみることが、深い呼吸になるスタートだと思います。

そこで初めて、楽に、深く呼吸をする自分の身体に出会い始めることになるでしょう。

 

その時には、「深呼吸とはこういう感じだろう」と思うともなく思い、探し求めていたものとは違う感覚が広がっているだろうと思います。

それは、僕がそうだったように、「だから深呼吸ができなかったのか」と腑に落ちる体験となり、ほっと息をつける瞬間を与えてくれるのではないでしょうか。

 

腰痛への視点

 

腰痛は、現代人が抱える大きな問題の一つですね。

ロルフィングセッションに来て下さる方の多くは、腰痛に悩んでいたり、その経験があります。

もちろん、僕にもその経験はあり、ロルフィングを学び、この仕事をするようになった大きなきっかけの一つにもなっています。

 

自分の経験からも、お会いしてきた多くの方々とのセッションからも、腰痛には改善される余地がたくさんあると考えています。

あきらめる前に、見直してみるところが、まだまだ残っているからです。

これまで知らなかったやり方があり、試してみる価値は十分にあります。

 

腰痛になるまでには、さまざまな理由があったと考えられます。

例えば、足首の捻挫や、膝痛をかばうため、腰に必要以上に力を入れないと姿勢を保てなかった。

または、呼吸が浅く、肩に力が入っていた。

あるいは、良い姿勢にしようと胸を張ったり、骨盤を立てようと努力することが、背筋や腹筋を固くしてしまった、など。

いずれにしても、腰だけの問題ではないと言えるでしょう。

 

ですから、腰痛の改善には、体全体のバランスを整え、腰痛が起きにくくなる条件を揃えていくことが効果的です。

つまり、「腰だけに負担が掛からないような身体・習慣を手にすること」を考えるのです。

そういう視点になれば、まだまだやってみることが沢山残っているのが分かってきます。

 

身体のどの部分が良くなっても、腰の負担が減り、腰の改善につながる。

この視点は、とても大切です。

だから、できることを一つづつ積み重ねていけば大丈夫だと、思えるようになります。

 

例えば、少し呼吸が深くなること。

足首を上手く使えるようになること。

顎の緊張が和らぐこと、など。

どれも、僕らが思っているよりずっと、腰痛に大きな違いをもたらしてくれます。

 

ロルフィングセッションでは、身体全体の筋膜のバランスを整えることと、望ましくない動きの癖や習慣を手放す練習をします。

その結果、偏らず、まんべんなく身体が動くようになることで、腰痛が変わっていきます。

腰痛に限らず、膝痛、肩凝りも同じ仕組みです。

 

身体全体のバランスが良くなると、部分の問題も良くなっていく。

それを実感することで、「まだ試してみることがあった」「やり方次第で、変わることができそうだ」とご自分の可能性に気付いて頂きたいな。

そう思っています。

 

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。

引き続きお目にかかることができる方、それから、今年から新たにお会いできる方、皆さんとのセッションの機会を楽しみにしています。

それぞれの人が、心地よく、本来のその人らしく、自然体で生きていけるようになると、より優しさや思いやりのある社会に変化していくのだろうなと、思います。

日々のセッションが、少しでも、そんな方向に進むきっかけになることを願って。

今年もよろしくお願いします。