気づくまでには時間がかかる

 

ロルフィングの勉強をする前のことです。

ニュージーランドの有機農場でしばらく働いた時期がありました。

 

持続可能な生活をデザインするパーマカルチャーというものがあります。

その考えを実践していることでよく知られた、とても素敵な場所でした。

 

自然に溢れた広大な敷地で過ごし、新鮮な野菜や果物を豊富に食べられました。

仕事は体力を使いましたが、人も素晴らしく、本当に気持ちの良い時間でした。

 

そこでの滞在を始めて、一週間くらい経ったときのことです。

急に、農場全体の匂いが分かり始めてきたのです。

 

「ここには、いい香りがあったのか」

空間に広がる良い匂いに気づいたという感覚でした。

 

それに加えて、食事の美味しさもはっきり分かり始めたことを覚えています。

それまでも美味しいと思い、そんな会話をしていたはずなのですが。

 

「ここの食事は、こんなに美味しかったんだ」

それをちゃんと理解したという感覚でした。

 

始めの頃は、十分にそれらを感じ、知覚する回路が使えなかった。

その良さや美味しさに慣れるのに少し時間が必要だった。

そんなことではないかなと思っています。

 

ところで、ロルフィングのセッションを受けると、身体のバランスや姿勢、動きが変わります。

外から見る側からは、その変化が良く分かります。

 

ただ、ご自身では、はっきりとした実感を持てない。

どう変化したのか、よく分からない。

そんな場合が時々あります。

 

それは、僕が農場にすごしながらも、良い香りや食べ物の美味しさを、ちゃんと感じられていなかったのと似ているように思います。

 

新しい変化を感じること。

新たな感覚に気づくこと。

そのためには、慣れていく時間が必要なこともあるようです。

 

分からないなりに、そんなものかなと回数を重ねていくと、ふと気づかれる時が来るでしょう。

違いが分かるようになっていたことに。

 

5回目のセッション〜大腰筋(腸腰筋)を使う

 

あまりよく知られていない筋肉の一つに、大腰筋(だいようきん)があると思います。

腸骨筋(ちょうこつきん)と合わせて腸腰筋(ちょうようきん)と呼ばれる場合もあります。

インナーマッスル、コアマッスル、深層筋などと呼ばれる筋肉の中で、代表的なものの一つだと言えます。

 

大腰筋は、背骨と太ももの骨(大腿骨)に繋がっている大きな筋肉です。

付着する部分からも分かるように、腰椎や股関節の機能に特に大きな影響があります。

 

この大腰筋が本来の機能を発揮できるようにすること。

それが、ロルフィング10シリーズ5回目のセッションでの、大きなテーマの一つです。

 

「楽に動ける」

「脚が長く感じる」

「背中が伸びる」

「腰が楽」

「呼吸しやすい」

「歩きやすい」

 

大腰筋がうまく機能してきた時の感想です。

身体が持つ、本来の働きが現れてくるのです。

 

「自然に、楽に動くというのはこんな感じなのか」

まずは、そんな感覚を体験してみること。

それが大きな一歩になるでしょう。

 

これまで、あまり発揮されていなかった大腰筋の働き。

その機能を使った身体を体験してみませんか?

 

夏山にて

 

広く、解放感のあるところでは、身体の感覚が変わるのを感じます。

 

例えば、混雑した電車の中から出た時のことを考えてみると分かりやすいのではないでしょうか。

外に出ると、息が楽にできていなかったことや、肩の力を入れていたことに気づきます。

 

山に登って、見晴らしがよい場所に立つと、日常の生活では使っていない感覚の存在が見えてきます。

いつもとは違う、身体の伸びる感じや、広がっていく感じなど。

とても心地よい感覚です。

 

普段の生活の中では、気付かないうちに窮屈な身体に慣れている。

毎回それを実感します。