僕は、思うようにならない姿勢や、楽にできない身体の状態に悩み、試行錯誤してきましたが、ロルフィングを通して、身体を楽にする手がかりが分かってきました。
変わっていく方法はあるのです。
ロルフィングセッションの大きな特徴は、受け手本人に参加してもらうことです。
「その人自身が、自分の身体に目を向け、身体への考え方や付き合い方を変えることが、健康を保つのに欠かせないのではないか」
そんな考えが基本にあるからです。
日常での身体の使い方や、毎日の過ごし方が、姿勢や健康に大きく影響します。
ということは、その要素が変化すれば、身体も変わるのです。
僕は、この視点に大きく助けられたので、セッションの中で、習慣や癖に気付き、それを手放し、本来の動きを手にする練習に時間をかける傾向があります。
アメリカのインストラクターが「あなたの、この部屋での歩き方が、あなたの人生の歩き方だ」という言葉を残しています。
人生の歩き方が、その在り方が、今の瞬間の部屋の歩き方に現れているということです。
どのような価値観で、どんなことを考えて生きているのかが、動き方に大きな影響を与えています。
身体や動きが変わるためには、いわゆる「方法」だけではない、別の何かが変わる必要があるとも言えるでしょう。
ロルフィングコミュニティーは、動きの変化を通して、身体(姿勢)の変化を探っていくアプローチを「ロルフムーヴメント」と名付け、発展させてきました。
ロルファーの認定とは別に、ロルフムーブメントの資格認定トレーニングがあります。
僕はロルファーになって3年目に、シドニーでのトレーニングコースに参加しました。
そこでは教え方よりも、ロルファー自身が、自分の身体への気付きを高めることに主眼が置かれていました。
自分の身体感覚を伴って学ばない限り、深まっていかないからです。
大きな助けになったのは「正しく動きたいと強く考えるだけでは上手くできない仕組みなのだ」という理解でした。
リラックスする方が良いということを、感覚的にも、理論的にもようやく納得できたのだと思います。
ちゃんとしようと思うことで、身体の奥が収縮すること。
無意識で続けている、小さい時に覚えた背中を緊張させる立ち方。
誤った解剖学の知識や、身体に持っているイメージ。
身体の内部や周辺にある、空間を感じにくい領域の存在。
目、耳、口などの感覚器官の緊張感。
このような、ほぼ無自覚な癖は、姿勢や動き方に大きな影響を与えています。
そこに意識を向け、はたらきかけることで、これまでとは違う身体が体験できます。
それは、脳の中にあるプログラム、情報、地図、設定を変えることで、身体の変化を促すような作業だと言えるでしょう。
トレーニングコースの終わり近く、インストラクターに言われた言葉があります。
「今は感じられないと思うけど、あなたの胸(ハート)の中には、もっと広大な空間がある。それは、もっと大きく、もっと深い」
だから、それを見続けていきなさい、いつか感じられるようになると。
その時から、普段の生活や日々のセッション、さまざまな学びの中で、その言葉を心に留めて過ごしました。
今、「本当にそうだったんだな、それが感じられるようになるんだな」と、感謝の気持ちと共に、その言葉を思い返します。
皆さんにも、当然広がっている空間です。
それに気づいていきましょう。
ささやかな感覚の違いに目を向け、それに気づき続けることが、大きな変化につながる。
そんなロルフムーブメントから学んだ視点が、僕のロルフィングセッションの核になっていると感じます。