流れを感じている身体

 

「何かが流れているような感じがある」

身体が変化して、楽になり、動きやすくなった時の、多くの方に共通する感想の一つです。

 

川の流れのような感覚。

または、空気か風が流れているような感覚。

身体の柔らかさや軽さを感じている時には、何かが流れているような感覚が浮かんでいることが多いようです。

 

それに対して、痛みがあったり、凝りを感じたり、または上手く動いてくれないと感じる部分がある場合。

そこには、何か滞っているような、詰まっているような感覚があるのではないでしょうか。

 

この感覚の違いを手がかりに、身体に変化を促すことができます。

 

「この辺りに流れるような感覚があったら、どんな感じなのだろうか?」

凝りや詰まり、固さを感じている部分に、そんな問いかけをしてみます。

 

すると、かすかに、流れるような感覚の存在が感じられている。

そんな気がしてくるのではないでしょうか。

 

その、一見気のせいのような感覚に気付いてみること。

それがきっかけとなり、少しずつ身体が変化していくようです。

呼吸が楽になったり、凝りや詰まりが気にならなくなったり。

 

始めのうちは、ご自分だけだと分かりにくいかもしれません。

そんな場合は、ロルフィングのセッションでご一緒に練習してみましょう。

 

どんな感じで問いかけると、どんな感じで変化に気付けるのか。

それを体感して頂けると思います。

その問いかける感覚に慣れていくと、いずれご自分だけでも出来るようになるでしょう。

 

「身体の感じ方や浮かぶイメージが変わる時、動き方が変わり、姿勢も変わる」

僕もそうでしたが、半信半疑の方がほとんどではないでしょうか。

 

そんなことで、身体の形や機能が変わるとは思えないのです。

それでも、体験を繰り返すと、そういう仕組みもあるようだと納得されると思います。

 

ご自分で、内側から、身体に変化を促すことができる可能性。

流れるような感覚のある、心地のよい身体から、それに気づいてみませんか。

 

部分が全体の一部だと思い出せた時

 

ある部分のはたらきは、全体との関係に影響を受けます。

その部分だけでは、その機能を十分に発揮できない、と言えるでしょうか。

 

ある部分の感覚だけがある場合。

そうではなく、全体の一部としての感覚もあり、部分でもあると感じられている場合。

その両者には、大きな違いが生まれるようです。

 

例えば、長い間、腰に痛みを抱えていると、腰の辺りの感覚や意識が高くなりがちです。

結果的に、他の部分や、身体全体への意識が低くなっていることが多いです。

無意識のうちに。

 

すると、腰が全体と調和した動きをしにくい状態になるようです。

そこで、少しづつ、身体全体の中での腰だという感覚を練習してしてみます。

他の部分にも意識を向ける時間を割いてみるのです。

 

すると、腰の感じ方、動き方に、違いが見え始めます。

 

それまでには感じられてなかった動きが現れる。

柔らかい感じになっている。

痛みが変わっている。

そんなことが起きたりします。

 

身体全体とのつながりがある時、腰のはたらきが違ったものになるのです。

 

部分は全体に影響し、全体は部分に影響します。

ある部分が全体と調和した時、どんな感じになり、どう動くのか。

それを体感してみるのは、とても価値のある経験だと思います。

 

部分は、そこだけでは存在せず、その部分だけでは十分に機能しない。

だから、それぞれの部分が、全体の中に調和することが大事ではないか。

 

それを身体で理解することが、ロルフィングの大きなテーマです。

 

気づくまでには時間がかかる

 

ロルフィングの勉強をする前のことです。

ニュージーランドの有機農場でしばらく働いた時期がありました。

 

持続可能な生活をデザインするパーマカルチャーというものがあります。

その考えを実践していることでよく知られた、とても素敵な場所でした。

 

自然に溢れた広大な敷地で過ごし、新鮮な野菜や果物を豊富に食べられました。

仕事は体力を使いましたが、人も素晴らしく、本当に気持ちの良い時間でした。

 

そこでの滞在を始めて、一週間くらい経ったときのことです。

急に、農場全体の匂いが分かり始めてきたのです。

 

「ここには、いい香りがあったのか」

空間に広がる良い匂いに気づいたという感覚でした。

 

それに加えて、食事の美味しさもはっきり分かり始めたことを覚えています。

それまでも美味しいと思い、そんな会話をしていたはずなのですが。

 

「ここの食事は、こんなに美味しかったんだ」

それをちゃんと理解したという感覚でした。

 

始めの頃は、十分にそれらを感じ、知覚する回路が使えなかった。

その良さや美味しさに慣れるのに少し時間が必要だった。

そんなことではないかなと思っています。

 

ところで、ロルフィングのセッションを受けると、身体のバランスや姿勢、動きが変わります。

外から見る側からは、その変化が良く分かります。

 

ただ、ご自身では、はっきりとした実感を持てない。

どう変化したのか、よく分からない。

そんな場合が時々あります。

 

それは、僕が農場にすごしながらも、良い香りや食べ物の美味しさを、ちゃんと感じられていなかったのと似ているように思います。

 

新しい変化を感じること。

新たな感覚に気づくこと。

そのためには、慣れていく時間が必要なこともあるようです。

 

分からないなりに、そんなものかなと回数を重ねていくと、ふと気づかれる時が来るでしょう。

違いが分かるようになっていたことに。

 

5回目のセッション〜大腰筋(腸腰筋)を使う

 

あまりよく知られていない筋肉の一つに、大腰筋(だいようきん)があると思います。

腸骨筋(ちょうこつきん)と合わせて腸腰筋(ちょうようきん)と呼ばれる場合もあります。

インナーマッスル、コアマッスル、深層筋などと呼ばれる筋肉の中で、代表的なものの一つだと言えます。

 

大腰筋は、背骨と太ももの骨(大腿骨)に繋がっている大きな筋肉です。

付着する部分からも分かるように、腰椎や股関節の機能に特に大きな影響があります。

 

この大腰筋が本来の機能を発揮できるようにすること。

それが、ロルフィング10シリーズ5回目のセッションでの、大きなテーマの一つです。

 

「楽に動ける」

「脚が長く感じる」

「背中が伸びる」

「腰が楽」

「呼吸しやすい」

「歩きやすい」

 

大腰筋がうまく機能してきた時の感想です。

身体が持つ、本来の働きが現れてくるのです。

 

「自然に、楽に動くというのはこんな感じなのか」

まずは、そんな感覚を体験してみること。

それが大きな一歩になるでしょう。

 

これまで、あまり発揮されていなかった大腰筋の働き。

その機能を使った身体を体験してみませんか?

 

夏山にて

 

広く、解放感のあるところでは、身体の感覚が変わるのを感じます。

 

例えば、混雑した電車の中から出た時のことを考えてみると分かりやすいのではないでしょうか。

外に出ると、息が楽にできていなかったことや、肩の力を入れていたことに気づきます。

 

山に登って、見晴らしがよい場所に立つと、日常の生活では使っていない感覚の存在が見えてきます。

いつもとは違う、身体の伸びる感じや、広がっていく感じなど。

とても心地よい感覚です。

 

普段の生活の中では、気付かないうちに窮屈な身体に慣れている。

毎回それを実感します。

 

自分以外の物差し、視点を使う

 

だれかの物差しや視点を借りてみる。

新しい感覚に触れる時や、何かを変えてみたい時に、良い手ががりになると思います。

 

その時の自分には、なぜか見えないことがあります。

慣れていくと、普通に見えるものでも。

 

例えば、セッション中に「身体のどこが変化したか、自分ではよく分からない」と言われることがあります。

そんな時は、ロルファー側の視点で、変化の内容をお伝えするようにしています。

 

「こんな風に動いているように見えます」

「先程と比べて、こんな感じはありませんか?」

 

それを聞きながら、身体に注意を払う時間をしばらく過ごしてもらいます。

 

「そう言われたら、たしかにそんな感じがないこともない」

「少しだけ、そんな気がする」

そんな言葉が返ってきます。

 

はじめは、それで十分だと思います。

いつもとは違う何かを感じるきっかけになっているからです。

 

そうやって、一度でもいいので、あいまいな感覚に目を向け、気づいてみること。

これは何かの感覚なのかもしれないと、ひとまず受け入れてみること。

そんな繰り返しが、これまでは感覚に入らなかったものに気づいていく助けになるようです。

 

自分以外の物差しを使ってみること。

これまでとは違う視点を使って、身体を観察すること。

 

こういった作業を、ロルフィングのセッションでは積み重ねることができます。

さまざまな習い事と同様に、これもまた練習した分だけ上達します。

 

新しい感覚や変化に気づきやすくなっている。

そんなご自分を感じられるようになるでしょう。

 

骨盤底と太ももの内側を使う

 

ロルフィング・10シリーズの4回目のセッションで、骨盤底や脚(太もも)の内側に働きかけます。

身体のさまざまな部位の中でも、特に身体意識がなくなりやすいところではないかと思います。

 

「これらの部分に注意を向けることがなかった」

「初めて考えた」

このような感想を話される方はとても多いです。

 

「内股の筋肉(内転筋)を使って歩きたいけど、上手く使えない」

「骨盤底筋を使えているのかどうか分からない」

運動をしている方であれば、このように悩まれていることもよくあります。

 

これまで、考えることも、注意を向けることもなかった部分。

または、どうやって使っていいのか分からず、悩んでいたところ。

 

それらは、より良い変化のための、大きな可能性を秘めているところだと言えます。

骨盤底や太ももの内側はそのような部分になりやすいです。

 

10シリーズの13回目が、この4回目の骨盤底、内腿へのワークへの準備となっています。

地ならしのようなことができているので、このような深い部分に働きかけた時にも、変化が継続しやすいのです。

 

よく分からなかったところを、少しだけ活性化させてみましょう。

脚の内側、骨盤底を使った歩き方、立ち方を体感してみませんか。

 

「思っていたのと違っていた」

「頑張って使おうとしなくても、そこが使えているのが分かる」

多くの方と同じように、そんな感想を持たれるのではないかと思います。

 

これは、身体にとって、とても大きな意味があります。

それを身体で理解して頂けると思うのです。

 

Less is better 〜 少ない方が良い

 

ロルファーとしての年数を重ねるうちに、腑に落ちてくる言葉があります。

以前の講義で聞いた内容や、昔読んだ本の中の言葉だったりします。

 

そのうちの一つが、ある講師の方の言葉です。

Less is better 少ない方が良い」

 

セッションにおいて、少ないくらいが良い。

多過ぎるのは、良くない。

そういう意味での言葉だったと記憶しています。

 

「なるほど」と思って聞いていましたが、もっと「なるほど」となってきました。

ロルフィングのセッションに限った話ではないなと分かってきたからです。

 

なんとなく、たくさんの方が良いと思いがちな自分がいます。

しっかりと変化を感じたい。

もっと良くしたい。

できるだけ、伸ばしたい。

より大きく変化したい。

なるべく早く、はっきりと、自分の思う結果を手にしたい。

 

そのような思いが、全体のバランスや調和という点からは、望ましくない結果になることが多いなと感じるようになってきました。

自分自身で身体をケアする時や、日常生活において、もちろんセッション中でも、それを実感します。

 

自分では良かれと思い、頑張ってみたことが、身体に負担をかけ過ぎてしまう。

結果として、バランスを崩し、身体を痛めてしまう。

そんなことになるようです。

 

だから、その時の自分の感覚では少ないと感じる。

または、大した変化だとは思えない。

それくらいの感覚の中で、落ち着いて進めていくことが、実はスムーズな変化に大切なのではないかと思うようになりました。

 

「自分には分からないだけで、それが適度な変化の量なのだろうな」

そう思うようにしてみると、少しずつ、感覚もより細やかになっていき、それが少ない訳ではないと理解できるようになっていきます。

 

自分には、少ししか変化していない、と見えている。

でも本当は、「少ししか」ではなく「適量」かもしれない。

 

そんな観点を少し試してみませんか。

変化への入り口が、少し見えてくると思います。

 

「少し」が「少し」では無いと分かってきたこと。

それが、ロルフィングの経験を重ねてきた中で、大きく変化してきたことの一つです。

 

ハードルを下げたところから

 

「仕事中や、日常の生活を送っている時、緊張しやすく肩の力が抜けない」

「思っているように動けない」

そういった悩みを抱えている方は多いです。

 

はじめは、ハードルを下げてみる。

無理なくできるような環境で、少しだけ成功してみる。

はじめの一歩としては、それで十分だと思います。

 

少しづつ、ハードルが上がっても出来るようになるでしょう。

忙しい日常生活で、やることを沢山抱えて、時間に追われている。

それは、ハードルが高くなった状態だと言えるでしょう。

 

そんな時、肩に力が入り、疲れてしまう。

よくあることだと思います。

 

ただ、ハードルが低い時には、話が変わってきます。

ロルフィングのセッションでは、ハードルが下がった状態になります。

そこでは、肩の力が入っていない自分に出会う確率がぐっと上がります。

 

まず、セッションに来て頂くので、いつもの場所ではないですね。

それだけでも、気が散ることなく、身体の感覚に集中しやすくなるでしょう。

 

また、横になった姿勢は、身体に入る力を減らすことができます。

姿勢を維持するため、身体に固くなる部分がありますが、そこが緩んでいきます。

 

そして、ロルファーが、手で身体に触れます。

人の手で触れられることで、身体は変化していきます。

身体が柔らかくなり、落ち着いてきます。

 

それに加えて、触れながら声をかけて、意識を向けるポイントをお知らせします。

自分だけで身体に注意をむけ、働きかけるよりもやり易くなります。

 

このように、緊張がとけやすい条件が揃ってくると、普段とは違う身体に出会い始めます。

ハードルが低い時に、楽な身体を感じる経験をしてみるのです。

 

まずは、ロルフィングのセッション中だけでもいいので、心地の良い身体を体感してみる。

これが大きな一歩になります。

それを繰り返すうちに、徐々にハードルが上がっても楽な時が出てきます。

 

そして、忙しい日常の生活の中でも、肩の力を入れないで過ごすことができる。

楽に歩くことができる。

落ち着いて、心地よく感じていられる。

 

そうなっているのが感じられる時が来ると思います。

多くの方々が、そのように変化されていったのと同じように。

 

身体の側面を思い出す

 

人の身体には、身体意識がなくなりやすい部分があるようです。

「身体がある」という感覚が薄くなるところです。

 

そういう部分に身体意識が戻ってくると、とても楽になり、新しい動きが可能になることが多いです。

身体の側面は、そんなところの一つだと言えるでしょう。

 

側面があることは、皆さんご存知だと思います。

ただ、その感覚があるでしょうか?

 

ロルフィングのセッションでは、3回目で身体の側面に働きかけます。

「身体の横を意識したことがなかった」

「ここには感覚がなかった」

セッション後に、そんな感想をよくお聞きします。

 

体の側面が伸びやかになると、肋骨の横の部分にも動きが出て、呼吸が楽になります。

また、骨盤や股関節の動きも良くなってきます。

それまでとは違う姿勢になり、違う動きが現れてきます。

 

ロルフィングin京都では、そういった変化を少しずつ確認して頂きながら、セッションを進めています。

繰り返し練習することで、どなたにも違いが感じられるようになるでしょう。

 

そうやって気づきを高め、違いが分かるようになることには、とても大きな意味があります。

自分で、より良い方を選択し、身体を変えていくことが可能になるからです。

 

自分自身で、身体をケアしながら、楽な身体で毎日を過ごせるようになること。

これが、ロルフィングの大きな目標の一つです。

 

身体の側面を思い出すこともまた、その目標に近づくための大きな手がかりとなります。

「身体の横がある」とき、どんな感じの身体になるか、体験してみませんか。