見ようとしないで、みる

 

身体の感覚に気づくこと。

これには、とても大きな意味があります。

変化していくためには欠かすことのできない要素だと思っています。

そのため、ロルフィングのセッションでは、身体の感覚に目を向けることを、繰り返し練習します。

 

その際に、よくあること。

それは、気づかないうちに、身体が固くなったり、収縮したりすることです。

 

こちらから、身体のある部分に注意を向けるような声かけをします。

そして、受け手の方が、そうすることを考えます。

 

すると、その瞬間、こちら側からは、身体が緊張し、収縮していくのを感じることが多いのです。

無意識に、力が入ったり、頑張ったりという反応が起きているのですね。

 

そんな時に、よく使う言葉があります。

それが、「見ようとしないで、みてください」というものです。

 

しっかりと目で見ようとする。

はっきり見ようとする。

 

そんなイメージで身体の感覚を見に行くと、緊張や収縮が起きやすい印象があります。

そうならないようにできないか、という意図が、この言葉にはあります。

 

見ようとする思いが強くなっていることに気づいて、落ち着いてみる。

見ようとしないで、注意を向けてみる。

すると、身体の緊張が緩み、呼吸が深くなってきます。

 

外から観察している側からは、その変化がすぐに感じられます。

特に、目や眉間、のどの辺りの緊張が和らぐような感じがあります。

 

初めうちは、緊張や収縮が起きているとは感じられないことがほとんどです。

気づいていないので、無自覚に繰り返している習慣なのですね。

 

ロルフィングのセッションでは、そうなった瞬間と、それが和らぐ瞬間をお伝えし、自覚できるようになる練習を繰り返します。

すると、ある時から、その違いが分かるようになってきます。

そこで、自分に起きていたことを理解できるようになるのです。

 

日常生活の中でも同じことが言えます。

何かを見ている時、何かを考えている時、気づかないうちに、心身に緊張が起き、身体が収縮している。

その可能性が高いのです。

 

そういった無自覚だった反応に、自分の身体を通して気づくようになる。

そして、自分自身で繰り返してきた、緊張や収縮を手放していけるようになる。

それが、ロルフィングで得られるものの中でも、特に価値のあることではないかと思います。

 

「見ようとしないで、みる」

その言葉を体感することには、生きやすさを手にする可能性が、含まれている。

そう思っています。

 

1年ぶりの滋賀・大津ワークショップ

 

11月初めに、滋賀・大津でワークショップを開催しました。

本来は4月に予定していたものです。

 

今回、注意しながらも行うことができて良かったです。

ご参加くださった方、本当にありがとうございました。

 

今年は特別な状況にあり、心身共に、緊張しやすい条件にあると思います。

ワークショップで、その緊張を少しでも和らげることができたら、と考えていました。

 

深く、らくに呼吸し、落ち着きを取り戻すこと。

穏やかさや、静けさを感じること。

そういったことに意識を向けることを、一番注意して進めました。

 

その結果として、身体の楽さや軽さを感じた方。

姿勢の変化や、歩き方の違いに気づいた方。

それぞれの方なりの体験があったと思います。

 

穏やかさや静けさを感じることが、身体に影響する。

その逆もそう。

 

ほんのちょっとした感じかたの変化も、ちゃんとした違いになる。

それを体感し、少しでも何かに生かして頂けるなら、嬉しいことです。

 

次は、来年の春に開催できたらなと思っています。

今回、はっきり感じられなかった方、また体験してみて下さい。

回を重ねることで、だんだんと見えてくることがあります。

 

良い感覚を楽しんで頂けた方も、ぜひ。

また新たな感覚が現れると思います。

 

琵琶湖畔で、京都とはまた違った雰囲気で、気持ちの良い時間でした。

ありがとうございました。

次回もまた、皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

 

深い呼吸・楽な呼吸・静かな呼吸

 

呼吸の大切さは、さまざまなところで説かれていますね。

浅い呼吸に悩み、楽に呼吸ができるようになりたいと思っている方は多いと思います。

また、健康になるため、深い呼吸ができるようになりたいと練習している方もいらっしゃるのではないかと思います。

 

僕自身も、呼吸が浅いことに気づいてから、深呼吸できないことに悩みました。

本に書かれているように呼吸法を練習し、頑張ってみるけど上手くできない、余計苦しくなるというのが、僕のいつものパターンでした。

今になると分かるのですが、深く呼吸をしようという思いで、身体が緊張してしまい、逆に楽な呼吸から遠ざかってしまう結果になっていたようです。

ロルフィングセッションでも、同じ傾向がある方にお会いすることが多いです。

だから、ロルフィングに来て下さるのだと思いますが。

 

セッション後に、「息が楽にできる」「自然に呼吸している」という感想をお聞きすることが多いです。

「普通に呼吸しているつもりだった」「苦しいと思ってなかったけど」という場合も結構ありますね。

身体が変化し、楽になってみると、息が浅く、呼吸が楽に出来てなかったことに気付きやすくなるようです。

 

人には、比較する対象ができて、差を感じることで、ようやく感じたり、違いが分かったりする仕組みがあるのだろうなと思います。

また、違いを感じるには、それを感じる回路や感覚が育ってくる必要もあるのだなと、これまでの経験の中で実感するようになりました。

そんな理由で、僕は、ロルフィングセッション中に、身体の感覚に目を向け、違いを感じてもらう時間をできるだけ取るようにしています。

そして、その作業には大きな価値があると、年数を重ねるにつれて、ますます良く分かってきました。

 

ところで、深い呼吸をすることと、大きく呼吸することは違うものだと思います。

人が楽に呼吸しはじめると、静かになっていくのを感じます。

そしてゆっくりとした感じになり、呼吸が全身に広がっていくような感覚に変わります。

そんな時は、自分が呼吸をしているというより、呼吸が起きているのを眺めているような感じに近いかもしれません。

 

「ちゃんと呼吸しよう、たくさん吸って吐こう」と思うことで、気付かないうちに作り出していた緊張に気付けるとよいですね。

まずは落ち着き、静かになってみることが、深い呼吸になるスタートだと思います。

そこで初めて、楽に、深く呼吸をする自分の身体に出会い始めることになるでしょう。

 

その時には、「深呼吸とはこういう感じだろう」と思うともなく思い、探し求めていたものとは違う感覚が広がっているだろうと思います。

それは、僕がそうだったように、「だから深呼吸ができなかったのか」と腑に落ちる体験となり、ほっと息をつける瞬間を与えてくれるのではないでしょうか。