ロルフィングを始めたアイダ・ロルフ博士は、ロルフィングのテーマである “重力と調和した身体” になるためのエッセンスを10回のシリーズにまとめ、教え始めました。
これがロルフィングの基本プログラムである “10シリーズ”で、レシピと呼ばれています。
僕がロルフィングのトレーニングコースで学んでいる時のインストラクターは、20年近くロルファーとしての経験を持っていました。
その彼が「今回、クラスで教えるために、10シリーズというプログラムを見直してみて、本当に良くできているものだと改めて感じている」と話してくれたことが、印象に残っています。
そして今、その言葉の意味が、以前にも増して、分かるようになってきました。
ロルフィング10シリーズの良いところは、10回の連続したセッションを通して、身体全体が重力と調和し、本来の動きを取り戻す力を育てていくことにあります。
傾いてしまった家のドアが開かなくなった時に、ドアだけを直すのではなく、家全体の傾きを直すことが根本的に必要になりますね。
同じように、部分的に起きているように見える問題でも、身体全体のバランスを整える視点を持っていることで、より継続する変化にすることができるのです。
例えば、下半身が不安定で、肩に力を入れる姿勢になっている方は、肩をマッサージしてみても、しばらくするとまた固くなり、肩凝りの状態に戻ってしまうことが考えられますね。
もし、肩の変化とともに、下半身のバランスも良くなれば、肩の柔らかい状態は続きやすいでしょう。
身体の全ての部分に同じことが言えます。
膝は、足首の影響を受けるし、その逆もあります。股関節は膝と密に関係しているので、どちらの不具合も、お互いに影響を与えることになるでしょう。
ですから、身体の変化のためには、それが受け入れられるような条件を整えながら、身体全体でのバランスやまとまりを大切にする視点が必要になります。
10シリーズの1回目のセッションでは、深い呼吸がテーマで、胸郭や横隔膜を解放するような内容で行われます。
それが、2回目以降のセッションでの変化を受け入れやすい身体への助けにもなっています。
そして、少し間隔をあけた2回目のセッションでは、足がちゃんと地面に着地するように働きかけます。
足に安定感が増えてくると、身体全体が安定するので、3回目以降の身体の深い部分の解放へ準備ができてくる、という具合です。
連続する10シリーズには、そのような系統立てられた部分に強みがあります。
それから、習慣を見直し、身体本来の動きを取り戻すという点から考えても、10回継続することには良さがあります。
様々な習い事をするのと同じですね。回数を重ね、慣れることで上達するからです。
楽に呼吸すること、肩を楽にして立つこと、緊張に気付き、ゆるめることなど、初めは難しくても、少しづつ練習し、回数を重ねることで、誰でもできるようになっていきます。
僕自身をはじめ、ロルフィングを受けて下さっている多くの方々がそうであったように。
できるだけスムーズに、良い変化が起きるように、皆さんそれぞれの特徴に合わせて、様々な方法、言葉がけを組み合わせながら、お手伝いします。
自分の慣れた視点や感覚ではなく、他者の視点、ロルファーの手があると変化が起きやすく、感じやすいものです。
僕自身も、ロルフィングの受け手になる時は、いつも思います。
これは1人だと分からないな、人の手があるとスムーズだな、楽だなと。
ロルファーは触媒のような存在とも言えますね。自分以外だから効果があるのです
加えて、日常生活での意識の持ち方、有効なイメージなどをご紹介して、各回の間に練習してもらいます。
次のセッションで、それが役立ったかどうかの確認をしてから、また新しい情報や感覚をご紹介して、次回まで意識して過ごして頂く、という流れになっています。
回を重ねるごとに、身体の柔軟性、適応力も増し、身体とのコミュニケーションがスムーズになっていくことが感じられるようになるでしょう。
そうやって、自分の身体と上手にやり取りができる神経回路を育てていくプロセスが、ロルフィング10シリーズです。
各セッションの内容とテーマは、簡単にまとめると以下のようになります。
1. 胸部・横隔膜を中心にしたワーク(自由な呼吸)
2. 足を中心としたワーク(身体の支え、地面への適応)
3. 身体の側面へのワーク(身体の奥行き、前後への広がり)
4. 脚の内側,骨盤底へのワーク(身体の中の広がり、支え)
5. 大腰筋を中心としたワーク(腹腔のバランス)
6. 背中側全体へのワーク(背骨全体のつながり)
7. 頭・首を中心としたワーク(頭と首のバランス)
8.9. 身体が全体として機能するよう、つなげていくワーク
10. 全体のバランスを考え、まとめるワーク
ロルフィング10シリーズを通して、心地よく生きられる身体を手にして、皆さんが可能性を広げていくお手伝いができると嬉しいです。
まだ試したことのない方法があり、見たことのない自分が存在します。
ぜひ、新しい感覚を味わい、楽しんで下さい。