機能と構造

 

本来の機能を発揮し、楽に、快適に動ける時の身体。

ロルフィングでは、それを「重力と調和した身体」であると説明します。

 

例えば、棒を支えるような時、垂直に立てる方が斜めにするよりも楽ですね。

また、家の場合を考えてみると、柱は垂直で、床面などは水平だと安定します。

 

身体にも、楽に動け、同時に安定もあるような姿勢、バランスがあるのではないか。

重力に対して最適な、身体の各部分の位置関係、並び方があるのではないか。

それを手にしてみましょう、という視点がロルフィングの特徴です。

 

ロルフィングは、正式には「Structural Integration 」という名称です。

直訳すると「構造の統合」といった言葉になるでしょうか。

 

身体を構成する、さまざまな部分の関係性を考え、つながりやまとまり、位置関係を考える。

全体としてのまとまりを手にしていく。

そういう視点を表しています。

 

良い動き(機能)には、それに見合った、身体の各部分の位置関係、つながり(構造)が必要です。

身体の状態が、どのように動けるのかを決める要素になるからです。

 

一方で、いわゆる良い姿勢、良いバランスの身体(構造)であるには、それに見合う身体の動き方、習慣(機能)が必要です。

日常生活でどのように動いているかが、姿勢や身体のバランスを決める要素になるからです。

 

コインの裏表のようなものだと言えますね。

お互いが影響を与え合うこと、その理解が大切だと思います。

 

ロルフィングでは、その両面に注意を払ってセッションを進めます。

実際に、この2つは、言葉で考えるように分かれてもいないですね。

全体で一つなのです。

 

無人運転

 

「自動運転のようだ」

「勝手に歩いている」

「歩こうと思っていないのに歩いている」

「歩いているけど、歩いている感じがしない」

「誰かに後ろから押してもらっている感じ」

 

ロルフィングのセッション後に歩いた時、よくお聞きする感想です。

 

「歩くのが楽だ」

「どこまでも歩けそう」

そんな言葉が続きます。

 

普段は、歩こうと思って歩いていた。

ちゃんと手を振って、姿勢よく歩こうと考えていた。

そんなことに気づく方が多いです。

 

あまりにも長く慣れ親しんできた自分の歩いている感覚。

これは、無数にある中の一つなのです。

 

身体のまとまりが良くなり、全身で一つの動きができる時。

考えないで、自然に一歩を出せた時。

普段とは違う歩き方になっているのを感じられると思います。

 

自然体で楽に歩くことは、より良い姿勢や心地よく動く身体へと変化する助けになるでしょう。

それは、自然体で楽な生き方にもつながっていくようです。

それに気づきながら、新たな歩き方で、毎日を過ごしてみませんか。

 

変わったら、分かる

 

アメリカでのロルファー養成トレーニング中のことです。

歩き方や立ち方を見て、どこに緊張があるか、どんなパターンがあるか、などを話し合うボディリーディングの時間がありました。

 

「こんなことが起きている」

「ここがこのように動いている」

 

モデルになったクラスメート達を見ながら、講師が話していきます。

でも、どうしても僕にはそのように見えてきません。

ちゃんと見ようとするのですが、何も分からないのです。

 

クラスの後、落ち込みながら「正直さっぱり分からない」と講師に伝えました。

そして「どうしたら分かるようになるのか」「何か見えるようになる方法はないか」と尋ねました。

 

そこで、講師が言ってくれたのがこの言葉でした。

「あなたの身体が変わったら、分かるようになる」

「それまで待ったらいい」

だから大丈夫だ、と言ってくれたのを覚えています。

 

それから、15年が過ぎた今。

本当にそうだったなと感謝しています。

当時と比べると、歩く姿を見る時、色々なことが感じられるようになっているなと思います。

 

少しずつ、自分の身体が変化し、身体感覚が増えるごとに、人の動きも見えるようになる。

なぜだか違いが分かるようになり、感じられるようになる。

そうやって、少しずつ、見えるものや分かることが増えてきたという感じがしています。

もちろん、今でもそれが継続中ですが。

 

どなたにも同じことが言えると思います。

ロルフィングなどを通して、身体が変化する。

すると、それまではよく分からなかったことが、なぜか分かるようになっていた、と。

 

だから、変わってみて、どう見えるようになるのか、どう感じるようになるのか体験してみる。

変わった後の自分で考えてみる。

そんな姿勢も、場合によっては有効ではないかなと思うのです。

 

変わったら、分かる。

だから、急いで、今すぐ分かろうとしなくていい。

変わった後の、分かる自分になるまで待ってみてもいい。

 

そう思えるようになること自体にも、身体を変える力があるのかもしれない。

変わっていく方々を見ながら、そう思っています。