ロルフィングの勉強をする前のことです。
ニュージーランドの有機農場でしばらく働いた時期がありました。
持続可能な生活をデザインする“パーマカルチャー” というものがあります。
その考えを実践していることでよく知られた、とても素敵な場所でした。
自然に溢れた広大な敷地で過ごし、新鮮な野菜や果物を豊富に食べられました。
仕事は体力を使いましたが、人も素晴らしく、本当に気持ちの良い時間でした。
そこでの滞在を始めて、一週間くらい経ったときのことです。
急に、農場全体の匂いが分かり始めてきたのです。
「ここには、いい香りがあったのか」
空間に広がる良い匂いに気づいたという感覚でした。
それに加えて、食事の美味しさもはっきり分かり始めたことを覚えています。
それまでも美味しいと思い、そんな会話をしていたはずなのですが。
「ここの食事は、こんなに美味しかったんだ」
それをちゃんと理解したという感覚でした。
始めの頃は、十分にそれらを感じ、知覚する回路が使えなかった。
その良さや美味しさに慣れるのに少し時間が必要だった。
そんなことではないかなと思っています。
ところで、ロルフィングのセッションを受けると、身体のバランスや姿勢、動きが変わります。
外から見る側からは、その変化が良く分かります。
ただ、ご自身では、はっきりとした実感を持てない。
どう変化したのか、よく分からない。
そんな場合が時々あります。
それは、僕が農場にすごしながらも、良い香りや食べ物の美味しさを、ちゃんと感じられていなかったのと似ているように思います。
新しい変化を感じること。
新たな感覚に気づくこと。
そのためには、慣れていく時間が必要なこともあるようです。
分からないなりに、そんなものかなと回数を重ねていくと、ふと気づかれる時が来るでしょう。
違いが分かるようになっていたことに。